東京高等裁判所 昭和33年(ツ)119号 判決
上告人はその上告理由において本件賃貸借の目的たる建物は昭和二十五年七月十一日以前に建築されたものであつて、地代家賃統制令の適用を受けるから、公定賃料額を基準として賃料額を算出するときは、前示催告当時の賃料は全部支払済であるに拘らず(その算定の内容を明らかにしていないが)、右公定賃料額を超える前示約定賃料(一ケ月金五千五百円)の延滞を理由に本件賃貸借契約が有効に解除されたものと判断したことは法令の解釈適用を誤つたものであるというけれども、本件賃貸借は昭和三十一年十月二十日に成立したことは原判決の確定した事実であり、上告理由で指摘する如く本件建物が昭和二十五年七月十一日以前に建築されたもので地代家賃統制令の適用を受けるものであること及びこれを前提として前示解除を違法不当とする抗弁事由については、上告人は第一審及び原審を通じこれを主張した事跡のないこと原判決の事実摘示並びに記録に徴し明らかである。そして既にかかる抗弁の提出がない以上原判決が前掲摘録の事実にもとずき被上告人主張の本件賃貸借契約の解除を有効なものと判断したのは相当であり、またかかる事由は職権調査事項でもないから、当事者の主張のない限り、この点につき特に審理を尽さなかつたとしてもこれを以て審理不尽の違法あるものということはできない。
(柳川 坂本 中村)